日本語には、「かえる」「かえす」と発音される様々な表現が存在します。
代表的なものに「帰る（帰す）」「返る（返す）」「還る（還す）」があります。
これらは発音は同じですが、使用する文脈や意味合いには大きな違いがあります。
この記事では、これらの単語がどのような状況で使われるのか、またその意味の違いや漢字について詳しく説明していきます。
「帰る」「還る」「返る」の違いとは？
「帰る」「還る」「返る」の違いを簡単にまとめます。
- 帰るとは、元の場所や状態へ戻ること
- 還るとは、元の場所や本来の状態に戻ること
- 返るとは、物事がもとの状態や位置に戻ること、あるいは向きが逆になること
還るは帰るよりも使われる頻度がすくなく、より象徴的で重みのある表現です。
「還る」は環境問題などとも結びつき、本来の状態に戻る意味合いの「土に還る」といった言い回しに使われます。
それぞれの使い方の例や、漢字の持つ意味合いについて解説していきます。
事例をみると使い方のイメージが伝わりやすいかと思いますので参考にしてみて下さい。
「帰る」と「帰す」の意味や漢字
「帰る」とは、元の場所や状態へ戻ることを意味します。
この表現は、人が故郷や自宅など、もといた場所へ戻る際に使われます。
例として、「自宅に帰る」「故郷へ帰る」といった使い方が一般的です。
一方、「帰す」は、他人をそのもとの場所へ送り返すことを指します。
たとえば、「先生が生徒を家に帰す」がこれに該当します。
また、「帰る」は出発点へ戻る場面にも用いられることがあり、「客が帰った後」やスポーツのシーンで「ランナーがホームに帰る」などの表現が見られます。
この単語の由来は、象形文字「肉」と「箒」の組み合わせから来ており、「無事に戻り、清めの場で神に感謝を捧げる」意味があるとされています。
「帰る」の敬語表現
「お帰りになられました」という表現は敬語の誤用としてしばしば指摘されます。
ビジネスコミュニケーションで耳にすることもありますが、実はこの表現は二重敬語で、日本語の敬語使用としては不適切です。
正しい敬語表現は「お帰りになりました」です。
「お帰りになる」はすでに敬語であり、さらに「られる」を加えると敬語が重複し、不自然な言い回しとなってしまいます。
具体的な使用例
「お客様は先ほどお帰りになりました」というフレーズは、相手の行動に対する敬意を示すために用いられます。
この正しい敬語の使用は、ビジネス場面での信頼関係を構築するのに役立ちます。しかし、間違った敬語表現も未だに広く使われています。
「還る（還す）」の意味や漢字
「還る」という言葉は、「元の場所や本来の状態に戻る」といった意味を持っていますが、その使い方には文脈による微妙な違いがあります。
とりわけ、「還る」は、長い年月を経たり、大きな困難を乗り越えたのちに出発点や原点に戻るような、深い意味合いを伴う場面で使われることが多い表現です。
たとえば、「祖国に還る」「大地に還る」といった使い方がその代表例です。
日常的に使われる「帰る」とは異なり、「還る」はより象徴的で重みのある表現となる傾向があります。
使用頻度としては「帰る」より少なく、限られた文脈で目にすることが多い語です。
最近では、生分解性プラスチックに関連して「土に還る」といった言い回しがよく使われるようになりました。
このように、「還る」は環境問題などとも結びつき、注目を集める場面が増えてきています。
「返る」「返す」の意味や漢字
「返る」は、物事がもとの状態や位置に戻ること、あるいは向きが逆になることを意味します。
たとえば、裏表がひっくり返るような変化や、混乱した状況から通常の状態へ戻るときに使われ、「正気に返る」などの表現がこれにあたります。
一方、「返す」は何かを元の持ち主や場所へ戻したり、向きを変える動作を表す際に使われます。
たとえば「本を図書館に返す」や「手のひらを返す」などが代表的な用例です。
この言葉のルーツは、動きの中で方向を逆にするという意味を表した象形文字にあるとされており、その意味が「返る」「返す」という形で現在まで受け継がれています。
【豆知識】「かえし」は調味料の名前でもある？
料理用語としての「かえし」は、もともと「煮返し醤油」と呼ばれる調理法が由来です。
これは、醤油を加熱して香りや味をさらに引き出す技法で、風味を豊かにするために用いられていました。
この「煮返し醤油」が略されて「返し」、さらに「かえし」と呼ばれるようになったとされています。
江戸時代には、醤油の保存性を高める工夫のひとつとして考案されたとも伝えられ、現在でもそばつゆや煮物の味付けに欠かせない調味料として親しまれています。
「帰る」「還る」「返る」の違いのまとめ
「帰る」「返る」「還る」といった言葉は、いずれも「元に戻る」という共通の意味を持っていますが、使われる場面や背景によって含まれるニュアンスが少しずつ異なります。
- 帰るとは、元の場所や状態へ戻ること
- 還るとは、元の場所や本来の状態に戻ること
- 返るとは、物事がもとの状態や位置に戻ること、あるいは向きが逆になること
還るは帰るよりも使われる頻度がすくなく、より象徴的で重みのある表現です。
「還る」は環境問題などとも結びつき、本来の状態に戻る意味合いの「土に還る」といった言い回しに使われます。
それぞれの違いをきちんと理解し、場面に応じて適切に使い分けることで、細やかなニュアンスを伝えることができますので参考にしてみて下さい。
